講談社エディトリアルから3月13日に出版された拙著・「増補改訂版 いぶき亭 四季の食卓・衆議院議長のこだわり手料理」の宣伝を兼ね、日本人の食についての私見をお許し願います。
先週で終了したNHKの朝ドラ「まっさん」に、貧しい少女が米櫃を開け、「お米のいいにおい」と言う場面がありました。昭和16年(1941)の頃の物語で、三歳の私は物心も付いていない頃です。むしろ小学生になった戦後から高度成長の波に乗るまでの間のひもじさ、栄養の悪さは今も記憶に残っています。豊かな時代に生まれた世代には考えられない状態でもありました。食べられないので健康を損なう時代から、食べすぎるので健康を損なう飽食の現代になったのですから。
現在の日本の食糧年間生産額は9兆円強、輸入額は7兆円弱、加工され付加価値が付いた消費額は74兆円。うち20%が廃棄されると言われます。食糧不足に苦しむ地球上の多くの人類を思うと、日本は金にまかせた何と傲慢で贅沢な成金的食生活の国になったのかと残念に思います。お金にまかせた高級ワインと高級ステーキが幸せなのか、質素な食材に感謝しつつ余すところなく頂いた、かつての心のこもった食卓が幸せなのか。
「いぶき亭 四季の食卓」の前書きの一部を載せておきます。是非書店でご注文・ご一読下さい!!
「 (前略) 私の食は、金をかけず手間をかける、金を使わず気を遣うレシピ。だれでも気軽に作れるものです。
ユネスコの無形文化遺産に認定された和食は、高級料亭の豪華な料理ではありません。海の幸、山の幸の恵みに感謝し、余すところなくいただきつくす、謙虚な日本人の食に対する心根、「いただきます」の心の認定です。
いぶき亭のコンセプトの原点にある私の受けた躾け、京町衆の心根は、巻末の私の「京がたり」にあります。慎ましい豊かさを、食という人間の原点を通じ感じ取っていただければと願っています。」
2015年4月1日