国会レポート

NO.248-2  解散の大義を考える

9月28日に衆議院が解散されました。解散の大義、つまり「国会(議員)で賛否を問うのではなく、国会を解散し主権者に直接伺う理由」がないとの批判も多く、メディアにも 「大義なき解散」、「自己保身解散」等の見出しが躍ります。

日本は大統領制ではなく、間接民主制の議院内閣制です。国民が直接行政権の長を選ぶ大統領制では、大統領の恣意的判断が入る危険があるため、議会と司法に強い権限を与え、三権分立の下で 権力のバランスをとっています。トランプ政権下の米国を見れば理解できます。間接民主制と議院内閣制は、唯一の行政権代表者を投票で選ぶ場合、ポピュリズムにより適格でない人物が選ばれるのを 避けるため、人類が創り出した統治の一形態です。

主権者は選挙により議員に主権を委ねます。議員の選挙により総理大臣が指名され、行政権が付与されます。行政権の行使について、内閣は予算や法案の審議、議決を通じ、議会のチェックを受けます。 この制度を採っている日本の憲法は、議会と内閣が対立し行政の円滑な執行が難しい場合(憲法69条:衆議院での内閣不信任)は、内閣と衆議院のどちらに軍配を挙げるかを、解散により主権者たる国民 に委ねています。しかし国会の審議に委ねるべき事案の可否を、憲法7条の「内閣の助言と承認による天皇の国事行為」として解散詔書の発出を頂き、国会を飛び越え直接国民に伺うことの合憲違憲については 長い論争があります。かつて7条解散について、違憲訴訟が提起された時、最高裁は「高度に政治的判断で、司法の判断になじまない」と、合憲違憲の判断を避けました。以来、7条解散は既成事実を積み重ね、 当然視されています。解散を批判するメディアですら、「解散権は総理(内閣)の専権」と平然と書き流しています。

あえて言えば、今回の解散の大義は、法案等で国会の支持、不支持を明確に問うのが難しい、対北朝鮮等への国家安全保障に対する安倍内閣の姿勢への国民の賛否を伺うとするのが、正しいと私は考えます。

2017年9月29日

伊吹文明

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